こんにちわ、リョウスケです。
今回は、世界最大のシステムインテグレーター企業であり、かつてはIT界の巨人とも言われた「IBM」の2018年度第1四半期決算の考察をしてみたいと思います。
まず、結論から言いますと、今回の決算は、普通でした。
IBMの2018年度1Qの売上高は、190億7200万ドルとなり、前年度と比較すると、+5.8%増収となりました。
アナリスト予想は、188億4000万ドルだったので、予想を大きく超えています。
また、純利益は、16億7900万ドルとなり、前年度と比較して-4.2%の減益となりましたが、 特別項目除く1株利益は、予想が2.42ドルに対して、2.45ドルだったので、予想はクリアしています。
というわけで、今回の2018年度1Q決算では、増収減益となり、売上、利益ともに、アナリスト予想を上回るものとなりましたが、この日同じく発表された2018年通期の見通し1株利益が、13.80ドルとし、こちらはアナリストの予想を下回りました。
続いて、売上の内訳を事業ごとに見てみたいと思います。
以下は、今回発表された決算データです。
◆IBMの事業ごとの売上の内訳
2018年 | 2017年 | |
Cognitive Solutions | $4,299 | $4,062 |
Global Business Services | $4,174 | $4,006 |
Technology Services & Cloud Platforms | $8,625 | $8,216 |
Systems | $1,500 | $1,395 |
Global Financing | $405 | $405 |
Other | $69 | $71 |
TOTAL REVENUE | $19,072 | $18,155 |
IBMは、大きく分けて5つの事業で構成されています。
「Cognitive Solutions部門」の売上は、今年度4,299ドルとなっており、前年度比+5.8%の増収となりました。
「Global Business Services部門」の売上は、今年度4,752ドルとなっており、前年度比+4.19%の増収となりました。
「Technology Services and Cloud Platforms部門」の売上は、今年度8,625ドルとなっており、前年度比+4.97%の増収となりました。
「Systems部門」の売上は、今年度1,500ドルとなっており、前年度比+7.52%の増収となりました。
「Global Financing部門」の売上は、今年度405ドルとなっており、前年度と全く同じ売上となりました。
この中で気になるのは、「Cognitive Solutions部門」と「Systems部門」の売り上げです。
IBMが、社を挙げて推している「Cognitive Solutions」部門の売り上げが増収となっていることは、IBMホルダーにとって嬉しい知らせですね。
また、これまで、長い間、IBMの負の遺産として、赤字が続いていた「Systems」部門も、前期に引き続き増収となっています。
これまでのIBMが、20期以上に渡って減収が続いたのは、レガシー事業の収益が非常に悪かったことも原因の一つですので、レガシー事業である「Systems」部門が、二期連続で増収を達成できたのは、少し明るいニュースのようにも思えますね。
もちろん、レガシー事業の売り上げが底打ちしたというわけではないので、安心できるわけではありませんが、少しずつ伸びる分野と衰退していく分野のバランスが取れてきていると感じています。
今後期待できる事業を成長させ、衰退が見込まれる事業を最適化していった先に、「IT界の巨人」の復活があると思います。それがいつになるのか、ちょっと分からないですね。
また、事業ごとの売上利益率は以下のとおりです。
◆事業ごとの売上利益率
2018年 | 2017年 | |
Cognitive Solutions | 76.3% | 77.3% |
Global Business Services | 23.3% | 23.4% |
Technology Services & Cloud Platforms | 38.2% | 38.8% |
Systems | 43.7% | 47.5% |
Global Financing | 34.4% | 31.8% |
TOTAL GROSS PROFIT MARGIN | 43.2% | 43.8% |
全体的に見ると、利益率は、少しずつ落ち込んできているんですよね。
「Cognitive Solutions」がとんでもない利益率を誇っていますが、それでも、少しずつ低減しております。
競争が激しいハイテク分野で、シェアを獲得するためには、どうしてもこのあたりが厳しい状況になっていくんですよね。シーゲル教授の提唱している「成長の罠」というのは、こういうところから来ているんだと思います。
ところで、IBMでは、「戦略的必須事業(Strategic Imperatives)」と位置づけたソリューションがあります。
この、「戦略的必須事業(Strategic Imperatives)」とは、「クラウドサービス」「ビッグデータ解析」「モバイル」「ソーシャルネットワーク」「セキュリティー」の5つのソリューションのことで、IBMは、これらのソリューションを伸ばしていくことを目指しています。
この「戦略的必須事業(Strategic Imperatives)」の売上は以下のとおりとなっています。
◆IBMの戦略的必須分野の売上(2018年度1Q)
今期全体の売上が「19.1B」だったのに対して、戦略的必須事項は、9.0Bとなっており、47.12%を占めています。
また、前年度と比較すると10%の成長となっています。
そして、クラウド事業は4.2Bとなっており、前年度と比較すると20%の成長となっていることがわかります。
このように、強力な競合先ひしめく、ICT業界の中でも、IBMは伸ばすべき分野をしっかりと成長させております。
戦略的必須事業の内訳は以下のとおりです。
◆戦略的必須事業の内訳
ソーシャル以外、全てのセグメントで増収となっていますね。
特に、クラウドとモバイル、セキュリティの分野の成長は素晴らしいです。
クラウドは、Amazon、マイクロソフトという強力なライバルがいる中で、売り上げを伸ばしている点に、IBMの底力を感じます。
また、最近は、仮想通貨の流出騒動など、セキュリティに関して非常に敏感となっていますので、さらにニーズは高まっていきそうですね。
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今回の決算では、増収減益となり、売上、利益ともに、アナリストの予想を上回ることができました。しかし、通期の見通しがアナリストの予想を下回ったため、アフターマーケットでは大きく株価を下げています。
まだまだ、IBMの復活は遠いってところでしょうか。
ただ、戦略的必須分野の売上は、順調に伸びてきているのは、明るい材料だと思っています。今回も、クラウド事業とセキュリティ事業の売上が大きく伸びていますからね。
しかも、PERが「13.18倍」、配当利回りが3%台後半となっており、ハイテク企業の中では、非常に割安感があります。
IBMの完全復活するまでは、安定した配当金をもらい続け、復活した際には、莫大なキャピタルゲインを手にしたいですね。
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